僕は彼女の運命の総括者であり、彼女は僕の人生の支配者である
六月十八日 快晴。 彼女の体に触れた瞬間、僕の理性は進入禁止の赤ランプをいとも容易く飛び越え、だからこそ、その甘美な蛮行へと耽溺していくのにまるで時間はかからなかった。 無遠慮な僕の指先が、あらかじめ決められたルートを辿るように彼女の体を下へと滑り降り、その感度を確かめるよ...
六弦の持つ無限性を遡源し、再現すると宣言
雨の降る中、その大きなケースを抱え、僕等は雑居ビルへと急ぐ。 5月13日。 ボサノヴァを生んだ、天才トランペッターがアムステルダムで謎の転落死を遂げてから、早18年。 チェットベイカーをリアルタイムに知らなくても、そのトランペットの音色は誰でも一度くらい耳にした事があるだろ...
ゲノムの交信(続 ゲノムの行進)
誰かを「理解」する。 これほど難しい事はない。 当然ながら、僕等を覆ういくつもの概要は、他人から認識されて、ようやく自覚的認知を伴う自己として成立している。 しかし、「キミ」から見た「僕」が、あらゆる「僕」の要素を顕在化しているわけではないし、「僕」が理解し得る「キミ」も、...
ゲノムの行進
「彼女」の様子が変わった。 とはいえ【或る朝、目が覚めるとグレゴール・ザムザは自分の肉体が巨大な毒虫に変身していることに気づく】的なものではない。 日々、変わりつつある彼女の変化や、或いは成長過程に於いて、僕の認識できる許容範囲から大きく「彼女」のソレが離れていく様子を、主...
ゴルゴダとブルースとアルコールと僕
4月7日。 日本に於いて、この日がどんな日か知る者は少ない。 僕にとって4月7日と、12月8日は同義の哀しみを覚えさせてしまう。 無神論者の僕でさえ、ブルースとアルコールに浸りたくなる。 例えば、そんな日だ。 愛や平和をファッションのように身に纏い、或る度、それを粘土細工の...