其レ即チ初恋デ候。
或る日の、真夜中。
独りで寂しくテキーラサウザなんかを飲んでるオーバー30の既婚者が大抵みなそうするように、その日の僕も他に違わず、インターネットな検索をかけてみた。
検索キーワード【統計 野良猫】
そこで、こんな事実を知るのです。
野良猫等、引き取り手のない動物死体処理数 628(年度計画)
これは、昭和28年度から始められた犬猫等動物死体処理業務を越谷役所の環境部清掃業務課管理係に委託した際の、年度計画の目標処理数だ。
遡って検索してみると、全国で毎年もの凄い数の野良猫や野良犬が 役所によって処理されている事実を目の当たりにできる。
それは、ある偏った一側面に於いては、仕方のないことだ。
世の中のすべての人間が、飼い主の居ない犬や猫に対して、自らの(些細な)犠牲を払ってまで、共存すべきとは考えていない。
つまり無条件に、或いは無差別に、犬や猫を愛することができる人間ばかりではないのだ。
そう。 つい、ほんの数日前までの僕のように。
僕は、犬や猫が大の苦手だった。
というより、全身を毛で覆われた動物の多くを 不気味なものとして(まさに)毛嫌いしていた。(←座布団1000枚)
だって、何? その実態?
表面からすごく遠いよ、その中身。
まぁ、そんな感じに。
それでもトッティの容赦ない懇願に押され ジャグブランキンに【まんず】がやってきた日から、少しずつ【全身を毛に覆われている科】の動物に対して 許容の門戸が開かれていったわけです。
それでも知らない犬はダメ。
初めて会う猫はダメ。
僕サイドから触るのはおろか、相手からのスキンシップは ホントに苦手で、つい敬語がこぼれてしまうほどに、畏怖っていたのです。
それが、つい先々週の出来事でした。
やり残した多くの仕事を片付けるため、ジャグブランキンに向かう深夜2時。
すでに40%濃度のアルコールが、2ℓほど全身をランニングしていた某大学病院の裏通り。
まるで、あらゆる因果を放棄したような絶対的トリップ状態の僕の足元で、突然に「ニャア」と一鳴きしたネコ科の子ネコ。(×2)
そしてちょっと離れてネコ科の中型ネコ。
すでに、炭化水素の水素原子を水酸基で置換した形の化合物(アルコール)に、これでもかと強姦されていた僕は、その甘ったるい囁きに、つい【全身を毛に覆われている科】の動物が苦手だという自分設定の前提を忘れ、生ぬるいアスファルトに膝まづいてしまったのです。
ニャァ、ニャア。
あれ? もしかして、かわいい? ネコなのに。
そうなんです。 かわいいんです、ネコって。
知らなかったよね?僕。
それから数日間、奥さんに探られないように、鰹節をポケットに忍ばせ その場所へ通い続けました。
しかし、どうする事もできない。
それ以上、どうする事もできないんだ。
【ネコに餌を与えないでください】と書かれた掲示板の下で、ただ食事を与えるだけ。
おそらく僕のこの行為が、どこかで誰かの迷惑に繋がっているんだなぁと解っていながら、ただ食事を与えるだけ。
いや、むしろ。
どうする事もできないなんて考えること自体が、僕ら人間の驕りやエゴなのかも知れない。
まるで、大昔の共産主義のように、強制的な同一、共通、統一思想のように乱暴で、不自由で、不細工な考え方なのかも知れない。
もしかしたら、この野良ネコ達は、そんなストレイな生き方に、圧倒的な居心地の良さを見い出しているのかも知れない。
ともあれ、捕獲してまで飼育しようなんて考えているわけではないのです。
ただ、或る日突然、このかわいい、かわいいネコ科のネコ達が、【環境部清掃業務課管理係】によって、まるで道路に投棄されているゴミを拾って捨てるかのごとく処理されてしまうかも知れないと思うと、心が「ムゥー」ってなってしまうわけです。
あぁ・・・。
どうしたらいいんだろうね?
わからないね。
ともあれ、テキーラサウザも底が見えてきました。
血中アルコール濃度は、もうすでに僕のキャパを超えているころでしょう。
今夜も【タマゴ蒸しパン】をご馳走してまいりましたが、ちゃんとお腹いっぱいになったのだろうか? なんだか気になって眠れないのです。